はじめに
電車を動かすための電気を集電するために必要不可欠なパンタグラフ。
上げたり下げたりする際、運転士しか知らない秘密があるのを知っていますか?
キーワードは上げ2秒、下げ6秒。
知られていない構造の秘密を、パンタグラフの役割・パンタ上げ・下げは6秒の3点に絞って解説します。
それでは出発進行。

パンタグラフの役割
この動画を見られている方にはすでにご承知おきだと思いますが、念のためパンタグラフは何なのかからお話ししましょう。
パンタグラフは電車にしかありません。
架線に流れている電気を電車に取り込むため、電車の屋根にこんな菱形の形をしたものが載ってます。

新しい電車なら菱形の半分の形のものだったりもします。

で、このパンタグラフを介して架線からの電気を電車に取り込んで、様々な機器の電源となります。
さて皆さんが電車に付いているパンタグラフを観察したとき、恐らく上がっている状態しか見たことがないと思います。
ただ車両によっては編成に付いている一部のパンタグラフを上げずに、あえて下げたままにしている場合もあるので、下がった状態を見たことがあるよといった方もいらっしゃると思います。

でもこのパンタグラフが上がったり下がったりする様子を見たことがある人は殆どいないでしょう。
パンタグラフが上がったり下がったりするのは、朝一に電車の電源を入れるときにパンタグラフが上がり、夜車庫に戻ってパンタグラフを下げて営業が終了するときがメインで、基本的には人目に付かない場所で上がったり下がったりします。


とはいえごく稀に特殊条件により本線上でパンタグラフを上下することもあるので、見たことあるよと言われる方もいらっしゃると思います。
ではどの様な仕組みでパンタグラフが上下するのか深掘りしましょう。
パンタ上げ
パンタグラフを上昇させる方法。
それは運転士が運転室にあるパンタ上げボタンを押すことで上昇させることができます。

運転士がこのボタンを押すと電磁弁が動作して、パンタグラフを下げた状態に固定している鍵にエアーが送り込まれロックが解除されます。



鍵が外れたパンタグラフはあとはバネの力で架線に当たるまで勝手に上昇していきます。
運転士はこのロックが外れるまでの時間である、約2秒間ボタンを押す必要があります。
あまりにも押してから早く離しすぎるといけないわけですが、まぁ大体の場合はしっかりとゆっくり押せば2秒ぐらいかかるので特段何かを気にする必要はありません。
一方、下げる場合は時間をしっかりと管理しないといけません。
下げは6秒
パンタグラフを降下させる方法。
それは上昇させる方法と同じで運転室にあるボタンを押します。
とはいえ今度は下げボタンを押す必要があります。

この下げボタン。
先程の上げボタンとは違う場所に設置されている場合があり、大体は運転席に座った状態で運転士の手が届く位置にあります。

なぜかと言えば、例えば人身事故や自動車との接触事故が発生したときに床下機器が損傷してしまう恐れがあります。
床下にはモーターやSIV装置など架線からの1500Vを直接受ける機器が設置されています。
なのでもし損傷して漏電なんかすると助けに入ろうと近付いただけで感電する恐れがあるので、パンタグラフを下ろす必要があります。
さらに架線になにか支障物がある場合、そのまま通過するとパンタグラフを損傷してしまう恐れがあります。
そんなこんなで緊急時にとっさにパンタグラフを降ろせるように手が届く位置に下げボタンが設置されています。
ではパンタグラフを下ろしましょう。
ここでのキーポイントはしっかり6秒数えて下ろしましょうです。
なぜ6秒数えないといけないのか?
それはパンタグラフを下ろす構造に秘密があります。
上がるときは鍵が外れればバネの力で勝手に上がっていた訳ですが、下げる場合このバネの力に抗う必要があります。

運転士がボタンを押している間、空気の力でこのバネを無理矢理押し下げ鍵にロックさせに行きます。
万が一、ロックされるまでの間にボタンから手を離してしまうと、再びパンタグラフはバネの力で上に上がっていってしまいます。

なので、パンタグラフが下りきるまでボタンを押し続ける必要があり、完全に降下するまで一定の時間を考慮して6秒間押し続けましょうとなっているわけです。
パンタグラフを上げる場合と下げる場合では少し仕組みが異なるのでこの時間差が生まれてきます。
皆さんがもし鉄道博物館などでパンタグラフを上げたり下げたりする際は、心の中でしっかりと秒数を数えて見て下さい。
裏話
数を数えるときはゆっくり数えるのがポイントです。
ちゃんと声に出しながら、いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーくって数えましょう。
早く終わらせたいって気持で、いちにさんしごろく。
じゃあ3秒ぐらいしかかかっていないので、なんの意味もないです。
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