はじめに
運転管理者の解任。
皆さんことの重大性に気付かなさすぎです。
ただ単に担当者の首が飛んだみたいなレベル感の話ではないんです。
最後までご覧頂ければ、鉄道会社で働かないと分からないこの問題の重大さを知って貰えると思います。
この動画ではなにがあったのか?運転管理者って?これも出世のため?の3点に絞って解説します。
それでは出発進行。

なにがあったのか?
さて今回の運転管理者解任事件。
ことの発端は今年の5月。
下記記事でもご紹介しましたが、養老鉄道の運転士が乗務前に義務付けられているアルコール検査を実施していないことが発覚しました。
しかも発覚の仕方が最悪で、運輸局へのタレコミから事件が発覚することになります。
で、調査をしてみると当該運転士は今回1回だけ忘れていたみたいな話ではなく、数年単位でアルコールチェックを実施しておらず、会社もこの運転士に対してアルコールチェックを実施するよう指導していないことが露呈しました。
この結果に運輸局は激おこ。
養老鉄道に対して再発防止策を講じるよう改善指示を出すことになります。
そして会社は心を入れ替えて業務を遂行する…なんてことはなくさらなるやらかしを重ねます。
時は移って6月。
電車を運転する資格を持っていない駅員が旅客電車を運転するといったことをやらかします。
しかも1回に飽き足らず、2回も…
さらにどこで入手したのか不明な乗務員室に立ち入るための鍵を所持していたことも明らかとなりました。
発覚したのは11月。
これには運輸局は改善指示だけでは処分が足りていないと、養老鉄道に対して全国で初めてとなる運転管理者の解任を匂わせることになります。
養老鉄道側としては国からこの様な処分がくだるのはさすがに体裁が悪いので、自ら運転管理者を交代したという顛末になります。

運転管理者って?
皆さんが運転管理者と聞いてどんな人を想像しますか?
なんか役職持ちのさえないおっさんが一人変わったんやろぐらいでしょうか?
でも私は全然異なります。
雲の上の存在の人が首!?って感じの温度感です。
そもそも運転管理者とはなにものなのか?について解説しましょう。
この運転管理者。
平成18年に新設された制度になります。
この年の前年。
尼崎脱線事故が発生しており、これを契機に鉄道事業法の一部が改正されました。
その中で各鉄道会社で運転管理者を1人選任しろと明記されており、その仕事内容は列車の運行の管理、 運転士及び車掌の資質の保持その他の運転に関するものを行わせるものと定められています。

めちゃくちゃ平たく言えば、会社内のすべての運転士や車掌を取りまとめる親分的な存在ってことですね。
しかもただ単に人を選べばよいだけではなく、一定の実務の経験や国土交通省令で定める要件を備える者のうちから選任し、国に届け出る必要があります。
つまるところ会社内で結構な役職の人がこの運転管理者に任命されることになります。
実際問題、養老鉄道の安全管理組織を確認すると、運転管理者のポジションはここ。
社長から考えたら、4番目のポジションに該当します。

ちなみにこれはどこの鉄道会社でも大体一緒で、参考にJR東日本を確認すると運転管理者は、モビリティ・サービス部門長および新幹線運輸車両部長またはこれらに準ずる職にある者から選任すると書かれており、ポジション的にはここの人が該当します。

ちなみに書かれていませんが、運転士の私はこの組織図でいうと乗務員関係現場長のまだ下の下になりますね。
私のような一現場の運転士からすると運転管理者なんて本社の雲の上の存在の人であり、社内誌など媒体でその姿を認識して、訓示を聞くことはあってもとても対等に会話をするような存在の人間ではありません。
今回はそんな人の首が飛んでおり、皆さんにもことの重大性が分かってもらえたでしょうか?
これも出世のため?
今回のこの一件で、運輸局がだいぶお怒りなのは明白です。
会社内で安全に電車を走らせるために、定められている各種法令などが全く順守されておらず、またそれをチェックする内部監査も全く機能していないのが完全に露呈しました。
さてこの解任された運転管理者。
ここからは推察でしかありませんが、降格なり左遷なり、相応の処分が下っていることでしょう。
この人1人の責任かと言われれば微妙なところではありますが、誰かが責任を取らないと収まらないので致しかたがなくっていう印象を受けましたね。
これがどこまで意味があるのかは私にはわかりません。
よくも悪くも日本的な会社って、末端の人間は平気で切り落とすのに、いい役職の人間はしばらくくさい飯を食べさせて、いいポジションで戻すって悪しき文化があるじゃないですか…
名前も特に出ているわけではないので、数年後には表舞台に返り咲くっていうのも普通にありそうですね。
こんなめちゃくちゃなことができる会社の風土があるので、本当にこの解任の一件で会社がいい方向に向いていくのかは、個人的にはたいぶ懐疑的ですね。
まぁよくなっていって下さいってことで動画を締めくくらせていただきます。
裏話
この話って地方の小さな鉄道会社のやらかしなのであんまり大きくなってないんですよね…
だってこれが天下のJRさんなら皆さん大騒ぎするでしょ?
あかんことはどんな規模の会社で等しく批判されるべきと思うのは私だけでしょうか?


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