踏切の障害物検知装置が人を検知できないわけ【ゆっくり運転士の鉄道豆知識】

鉄道豆知識

踏切の安全を見守る、踏切障害物検知装置。
踏切内で立ち往生があれば電車の運転士に異常を知らせるものですが、実は人の立ち往生は検知することができません。
無理に横断しても電車が止まると思っているそこのあなた。
マジで死にますよ。
踏切障害物検知装置の役割と近年の進化を、踏切障害物検知装置って? 、基本の障検、平面式 、三次元式、通行者のモラルの5点に絞って解説します。
それでは出発進行。

自動車が通行できるような大きな踏切には必ずといっていいほど設置されている、この装置。
その名を踏切障害物検知装置と言います。

踏切の隅に障害物検知装置(障検)が設置されてます

このくっそ長い名前の装置、名前が長いのでこれからは障検と略しますね。
さてこの障検。
何のために設置されているのかと言うと、踏切内で立ち往生してしまった自動車を検知するために設置されています。
ちょっと鉄道に詳しい人なら、無謀横断したとしてもこの障検があるから踏切で立ち往生しても大丈夫やと思われているかも知れません。
でも残念ながらこの障検は車など大きなものが立ち往生した時を想定して作られたものであり、人が歩いたり自転車に乗ったまま立ち往生した場合は検知することができません。

障検は車を検知しても人は検知できません

人は検知できない構造上、先述もしましたが自動車が通行できるような大きな踏切にしか設置されておらず、人しか通行できない小さな踏切ならそもそもこの装置がなかったりもします。
なぜ小さな踏切にはないのか?そもそも障検が設置されだした経緯として、昔は車がエンストしたり、踏切部分の道路状態が悪かったりして今よりも立ち往生する可能性が高く、また簡単に逃げ出せず万が一電車と接触した場合、大きな事故になる可能性が高いのでそれを防ごうとする目的で設置され出しました。
なのでそもそも人は勝手に逃げるよね。
で、電車と接触したとしても電車側には大きな損傷になりにくいよねって考えで、障検の設置費用またランニングコストを考えて小さい踏切には設置されていることが少なくなっています。
では障検の仕組みを解説しましょう。

一般的な踏切にある障検。
恐らくこういったやつです。
形は会社により差異はありますが、基本的な機能は同じです。
障検はニコイチで一方から赤外線ないしレーザー光線を発射させる発光器と、もう一方でこの光線を受ける受光器から成り立っています。

障検は発光器と受光器から成り立っています

でもし踏切内に支障物があった場合、この光線が途中で遮断され、受光器に光線が届かなくなるので踏切内になにかあるぞと検知することができます。
で、電車の運転士に対して緊急に電車を止める信号を現示することになります。

障検で異常を検知すると付近の特殊信号機に停止信号を現示させます

このタイプの障検の名前は会社により異なりますが、動画上では光センサ式と呼んでおきます。
さてこの光センサ式には重大な欠点があります。
それは踏切を上から見るとよく分かります。
一般的な踏切の場合、遮断桿の少し内側に上下線で1セットずつ、上下線の真ん中に1セット、上下線の線路とクロスするように1セットずつ設置され、1つの踏切で5セット設置されてます。

一般的な踏切では障検が5セット設置されています

さて踏切がしまって、障検から光線が発射されました。
これを見てこの障検の弱点が分かりましたでしょうか?
こいつの弱点。
それは検知できる範囲が凄く限られているということです。
この光線が途切れたときに検知できるということは、言い返せば光線が切れないと検知することができません。
光線は凄く細い線みたいな感じです。

障検の光線はすごい細い線です

なので今、青で囲ったエリアに何か支障物があった場合、それは検知することができません。

青いエリアになにか異常があっても検知することができません

車のような大きなものであれば、どこかの光線に引っかかることができますが、人の場合この光線上にいないなんてざらにあります。

車は大きいのでどこかの障検に引っかかりますが…
人だと小さいので障検の光線に引っかかりません

しかも運良く人がこの光線を遮断したとしても、障検の構造上数秒間連続して遮断しないと、支障物があると認識してくれません。
なので踏切内で人が歩いていたとしたら光線が遮断されるのは一瞬になるので、なにもないと判断されることになります。

一定秒数間、光線を遮断しないと異常を検知できません

で、もう一つ弱点があって、それは雪に弱いということです。
めちゃくちゃ雪が降っていて、その雪が支障物であると判定してしまったり、列車が通過したときに巻き上げた雪が発光器や受光器に付着して上手く光線を送受信できないことが多発するので、雪国では踏切の車が通行する部分にループコイルを設置して電子作用により車を検知する方法もあります。
さてこれが一般的な障検であり、車のような大きなものは検知できるけど人は検知できないといった大きな欠点を抱えています。
でも昨今、鉄道会社ではこれではまずいということで人が立ち往生しても検知できる仕組み作りを実施しています。
では最新の障検はどうなっているのか?
お話ししましょう。

さて先程の障検は線で異常を検知する方式でした。
なので検知できる範囲がごく限られていた訳ですが、この検知エリアを広げるため開発されたのが平面式になります。
平面式は踏切内にレーザー光線を平面的に発射し、人や車など支障物がある場合、このレーザーが跳ね返ってくるのでこの跳ね返りを検知して踏切内に支障物があることを検知します。

四隅から平面的にレーザーを発車して…
踏切を平面的に監視します

巷にあるレーダーと一緒ですね。
例えば車に付いているレーダーは前方の車を検知して急接近したにも関わらず、ドライバーがブレーキをかけない場合自動的にブレーキをかける訳ですが、この前方の車を認識するのと同じような原理です。
平面式を導入することで先程の光センサ式と異なり、支障物の検知エリアを線から平面的に広げることができました。

エリアないにいれば人でも検知することができます

さてこれで一件落着かと思われるかもしれませんが、ところがどっこいこの平面式にも弱点があります。
それは踏切を横から見て貰うとよく分かります。
さて踏切を横から見た場合、光センサ式でも平面式でも踏切の四隅に障検が付いているわけですが、この高さに注目してみて下さい。
どちらの場合でも支柱にそれぞれの装置が設置されているわけですが、その高さは地面から50cm程度の高さになっています。

設置されている高さが原因で…

普通に歩いている人や車が立ち往生していれば問題ないですが、例えば転倒している人がいたらどうでしょうか?
転倒しているということは地面に這いつくばっている状態になると思います。
そうなれば残念ながら高さ的にレーザーの下側でトラブルが発生していることになり、せっかくの平面式であるとはいえ検知できないことになってしまいます。
平面式の弱点は高さがそんなにないものに対して検知できないといったことになり、これを克服するため転倒しているような人でも検知できるようにしようとした障検があります。

高さがないものを検知するのが苦手です

さて最近の鉄道会社に導入されつつある障検。
先程の平面式かこの三次元式を導入するかに2分されています。
三次元式は今までのものとは異なり、踏切の上からレーザーを発射する形になります。

踏切の上の方からレーザーをあてて踏切を監視するのが三次元式です

上からレーザーを発射させる以外は今までの障検と大きな差異はありません。
しかしながらこの上から発射させることにより平面式では検知することができなかった転倒している人も検知することができます。

三次元式の仕組みがこれ

現在のところこの三次元式障検を導入することが障害物を検知することに対しては秀でています。
とはいえお金がかかることには間違いないので、既存の障検を使いつつ別途踏切を監視するカメラを設置して、AIにより人などの障害物を検知するような実験もなされています。

最近はAIにより人を検知する方法もあります

こんな感じで鉄道会社では踏切の安全を保つため時代にあった保安設備を導入しているわけですが、どれだけよい設備を導入したとしても踏切を利用する側のモラルがなければ何にもなりません。

踏切で電車の停止を要する緊急事態が発生して障検が異常を検知。
そして電車が踏切の手前で止まって事故が未然に防げたとなれば最新式の障検を導入してよかったとなるわけですが、残念ながら現実はそうではありません。
大体の場合は無理に横断した人が踏切が閉まったのに踏切内に残っていて、それを支障物があると検知して電車に異常を知らせる、しかしながら電車が近づいたときには既に踏切から出て行っている。
こんなパターンが一番多いです。
これをされる度に電車は減速運転を強いられるので電車に遅れが発生しますし、安全確認の為に止まれば付近の踏切を含めて長時間踏切が閉まりっぱなしになることを強要されます。
こんなことになるぐらいなら最新式の障検でなく、人が検知できない古い障検の方がええやんと思えるほどです。
最新式の障検は今までの障検よりも格段に安全性を高めることができるものです。
とはいえ全ての踏切に導入されているわけではなく、従来の障検である場合も多々あります。
踏切の安全を守るために機械が導入されているわけですが、結局は皆さんの踏切の渡り方に依存している部分が大きいです。
大丈夫であろうという心は捨て、踏切は危ないところであると言うことを心に刻んで頂ければ幸いです。

障検が異常を検知したときって9割方問題ないことが多いんですよ。
先述もしましたが大体は渡りきれない人が原因で、渡りきれない理由も警報音が鳴っているのにも関わらず踏切を渡ろうとするからなんですよね。
で、毎回毎回、緊急信号を受けて私はめちゃくちゃビビッて急ブレーキをかけに行くわけで、乗っているお客さんにも多大な迷惑が掛かっていることを、自覚して頂きたいですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました