不正乗車をした場合
さて不正乗車をしてしまった場合、どうなってしまうのか?
今回も小田急電鉄の旅客営業規則より引用します。
乗車券類の無札及び不正使用旅客に対する旅客運賃・増運賃の収受
第264条 旅客が、次の各号の1に該当する場合は、無札旅客として、当該旅客の乗車駅からの普通旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃と併せ収受する。
⑴ 係員の承諾を受けず、乗車券を所持しないで乗車したとき。
⑵ 別に定める場合を除いて、乗車券に入鋏を受けないで乗車したとき。
ただし、旅客に悪意がなく、その証明のできる場合はこの限りでない。
第167条の規定によって無効となる乗車券(偽造の乗車券を含む。)で乗車したとき。
⑷ 乗車券改札の際にその呈示を拒み、又は取集めの際に引き渡しをしないとき。
2 前項の場合は、旅客が第167条第1項第6号の規定により無効となる普通乗車券又は、特殊割引回数乗車券で乗車したときは、使用した各乗車券の券面に表示された区間と、区間外を通じた区間を、乗車したものとし計算した前項の規定による旅客運賃及び増運賃を、当該旅客から収受する。
前回解説した無効な切符を使って電車を利用した以外にも、切符を買わずに電車に乗車した場合や、切符の確認に応じない場合なども含めて同じ処分を受けることになります。
処分の内容
先程の規定にはこう書かれていました。
当該旅客の乗車駅からの普通旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃と併せ収受する。
例えば200円区間で不正乗車した場合。
お客さんが払う金額は乗車した区間の運賃200円に、その2倍の増運賃200×2である400円を足した600円を支払うことになります。
あれ。冒頭で3倍じゃないって言ってたのに、200円区間で600円なら3倍やん。
嘘つかれた。と思われるかも知れませんが、実はそこには罠があります。
先程の規定にはこう書かれていました
当該旅客の乗車駅からの普通旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃と併せ収受する。
さぁここで問題になってくるのは乗車駅からと言う言葉です。
当然、駅員はこのお客さんがどこから乗車したのか分かりません。
なのでどこから乗車したのかはお客さん自身で証明しないといけません。
もしあなたが駅員の立場だったとして、不正乗車をするようなお客さんが申告する乗車駅を信用することができるでしょうか?
明らかに虚偽申告をしているなど、お客さんが自身で乗車駅を証明することができなかった場合、この様な対応が待っています。
再び、小田急電鉄の旅客営業規則より引用します。
乗車駅等が不明の場合の旅客運賃・増運賃の計算方
第266条 第264条の規定により、旅客運賃・増運賃を収受する場合において、当該旅客の乗車駅が判明しない場合は、その列車の出発駅(出発駅の異なる2個以上の列車を併結運転している場合は、その最遠の出発駅、又接続列車のある場合で、その接続列車に乗車したことが明らかなときは、その接続列車の出発駅)から、それぞれ乗車したものとみなして同条の規定を適用する。
要約すると、乗車駅が分からない場合、お客さんが乗ってきたであろう電車の始発駅から乗って来たものであろうとして計算します。
もし運悪く長距離の列車に乗ってきたであろうと判断されると、運賃だけでとんでもない金額になってしまいます。
関西の有名な長距離列車である新快速で不正乗車をしてしまった場合を考えて見ましょう。
あなたがもし敦賀駅で不正乗車を見つかり、駅員が直近に到着した播州赤穂発の新快速に乗車してきたであろうと判断した場合、あなたがいくら隣の駅から乗りましたと訴えてもその乗車駅を証明することができなかったら、播州赤穂からの運賃4,510円とそれに2倍の増運賃9,020円を足した13,530円を支払うことになってしまいます。
たった数駅しか乗ってないから数百円の運賃の3倍やから1,000円いくかいかんかぐらいやろ、少しの罰金を払えばええやんと思っているととんでもないしっぺ返しを食らうかも知れません。
ここまで、不正乗車をしたら思ったよりも高額な罰金を払わされるんだなと知って貰えたと思いますが、実はもっと高額。もしかしたら桁違いの罰金を支払わないといけなくなる可能性もあります。
桁違いの処分
再び小田急電鉄の旅客営業規則より引用します。
定期乗車券不正使用旅客に対する旅客運賃・増運賃の収受
第265条 第168条第1項の規定により定期乗車券を無効として回収した場合(第168条第2項において準用する場合を含む。)は、当該旅客から次の各号による普通旅客運賃とその2倍に相当する額の増運賃とをあわせ収受する。
ここから一気に解説すると、こいつなにを言ってんだと言われそうなので、1つずつ解説します。
まずこの規定では不正乗車により定期券を無効として回収した場合の罰金について書かれています。
定期券を使用した不正乗車を取り締まった場合の罰金には3つの方法があります。
動画の都合上、3つの方法のうち3番目の方法から解説します。
(3) 第168条第1項第6号に該当する場合であって普通乗車券を使用したとき及び同項第10号から第12号までの1に該当する場合は、その乗車した区間に対する普通旅客運賃
定期券と普通乗車券を一緒に使った場合の不正乗車、学割証等の証明書を持っていなかった場合、係員の承諾を得ずに区間外の乗車等をした場合は乗車した区間に対する普通運賃+増運賃を請求されます。
ここは先程まで解説した場合と同じですね。
(2) 第168条第1項第6号に該当する場合であって、特殊割引回数乗車券を使用したときは、定期乗車券及び特殊割引回数乗車券の券面に表示された区間と、その区間外とを通じた区間を、1往復乗車したものとして計算した普通旅客運賃
定期券と回数乗車券を一緒に使った場合の不正乗車は、今まで計算してきた計算方法とは異なり、移動した区間を往復したものと考えないといけません。
なので乗車したと認められる区間の運賃を2倍として計算して、その2倍運賃の2倍の増運賃を足した金額が罰金となるので、都合普通運賃の6倍の金額を請求されることになります。
先程の敦賀・播州赤穂間で当てはめるとすれば、まず普通運賃が4,510×2で9020円、それに増運賃の9,020×2である18,040円を加えた、27,060円を支払うことになります。
ここまでくればかなりの罰金を支払うことになることを理解して貰えたと思いますが、更に話はここで終わりません。
ここでは終わらない
(1) 第168条第1項第1号から第5号までの1に該当する場合はその定期乗車券の効力が発生した日(第5号に該当する場合で効力の発生した日が異なるときは、発見日に近い日)から、同項第7号に該当する場合はその使用資格を失った日から、同項第8号に該当する場合はその発売の日から、同項第9号に該当する場合はその有効期間満了の日の翌日からそれぞれの無効の事実を発見した当日まで、その定期乗車券を使用して券面に表示された区間(同項第5号の場合においては、各定期乗車券の券面に表示された区間と区間外とを合せた区間)を、毎日1往復(又は2回)ずつ乗車したものとして計算した普通旅客運賃
他人の定期券を使用していた、券面を偽造した定期券を使用していた、2枚以上の定期券を使用して不正していた場合、定期券の有効期間内であればいかなる理由があろうとその定期券の使用開始日まで遡り、1日1往復していたものとして罰金を支払うことになります。
もし6ヶ月定期券を使用して、見つかったのが定期券の使用期限の最終日だったとします。
すると180日間その定期券を使用して不正をしていたと判断されるので普通運賃の180倍の金額を請求されてしまいます。
なのでたかが200円区間を不正乗車したとした場合
200×2(往復)×180(日)=7,200円の普通運賃とそれの2倍の増運賃14,400円を足した21,600円を支払うことになります。
もし1000円区間なら
1,000×2×180=360,000円の普通運賃とそれの2倍の増運賃720,000円を足した108,000円となり、1,000円区間を越えてくると簡単に100万円の大台を超えてきます。
ここまでくれば桁が大きすぎて訳が分からなくなりますね。
でも残念ながら話はここでは終わりません。
この計算式は定期券の有効期間内で不正乗車をした場合に適用されるものなので、定期券の有効期間外で不正乗車をすると更に大変なことになります。
もしあなたが使用期限を終わった定期券を使用して不正乗車をした場合、その定期券が使用できなくなった日から1日1往復したとして罰金を支払うことになります。
その為、1年間使っていた、2年間使っていたとなればドンドンと日数が増えていくので、あなたが支払う罰金は青天井に増えていくことになります。
もうそうなれば支払うことができなくなるかも知れませんね。
不正乗車の罰金は3倍の運賃を支払えばいい。
どこかでこの様なことを聞いたことがあるかも知れませんが、乗ってきた列車や使用した切符によってとんでもない金額を請求されることがある可能性を知って貰えたのではないかと思います。
裏話
実際に不正乗車で3倍の増運賃を払ってもらったかと言うと私はまだありません。
ただ一昔前は、不正した客を取り締まった数でその人の成績が上がるってことがあったみたいです。
その時代はバンバン取り締まっていたみたいですけど、今は時代が変わって駅員がいる前で不正乗車する人は少ないですからね…
ただ駅員がいない所では堂々と…
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