脱線運転士に待つ末路とは? 南海

ひとりごと

はじめに

さて既に皆さんもご承知の通り、南海電鉄の車庫線内で脱線事故が発生しました。
今回はこの運転していた運転士にどのような問題点があったのか?また今後予想される運転士の処遇など。
今わかっていることを基準に現役車掌が解説します。

何があったのか?


さて今回、どんな脱線事故だったのか既に報道によりご存知の方もいるかも知れませんが、一応時系列を整理します。
南海電鉄の公式ホームページより引用します。
5月26日。難波駅発橋本行き特急りんかんとしての営業運転を終えた列車は入庫のため回送列車として小原田車庫まで運転した。
列車は小原田車庫に到着後、車庫内の構内運転士がこれまで運転してきた運転士と乗務交代をした。
その構内運転士は、留置番線へ車両を移動させるため入換信号機の進行信号を確認し車両を動かすところ、停止信号の現示であるにもかかわらず車両を動かし、前方の転てつ器が正当方向に開通していない状態で進入し、転てつ器を損傷させ停止した。
その後、構内運転士は当該転てつ器が損傷していることに気が付かず、元の停止位置まで動かそうと車両を退行させ、当該転てつ器が損傷していたことで、難波方面から3両目、4両目の一部の車輪が脱線した。

不幸中の幸い?


鉄道に関する事故が発生した場合、直ぐに警察、そして事故調査委員会がすっ飛んできます。
多きな事故になればなるほど、その鉄道会社の人間は全て現場から追い出され立ち入ることができず、運転士も警察に持っていかれ会社的に何かできることは無くなってしまいます。
そしてマスコミが連日連夜報道し、その影響でお客さんからも厳しい目を向けられ、働いている身からすればそれはそれは大変なことになるわけです。
ただこれは本線上でしかもお客さんに怪我を負わせてしまったりした場合のお話。
今回のような、車庫線で事故を起こした場合、当然関係個所に連絡はしないといけませんが、会社内である程度の自由が効きます。
いい意味でも、悪い意味でも…
個人的には車庫線内でかつ誰も怪我をしていないので、南海さんは助かったなぁと感じますね。
なので今回の事故復旧・原因究明などは南海さんが主導権を握って行うことができると推察されます。

りんかん

問題点


そもそも今回は事故の部類としてはかなり重いです。
信号機を見誤って、冒進させてしまうことは事故としてはたまにあります。
当然これも大きな問題点ですが、そこから無断退行・脱線はかなりやばいです。
そもそも、冒進とか退行の意味はご存知ですか?
鉄道では列車と列車の安全を確保するために、一定の区間に区切った閉そくと言った考え方をします。
この閉そく区間の中に列車がいれば、赤信号を現示して他の列車がこの区間に入ってこない様にすることで、列車と列車の安全を確保しています。
万が一、この後続列車がこの赤信号を超えて進入しようとした場合、最近では様々な保安装置を駆使して何とか次の閉そく区間までに列車を止めようとします。
ただこの保安装置も万能ではないので、次の閉そく区間までに列車を止めきれないような場合もあり、列車が赤信号を超えて次の閉そく区間に進入してしまうことを冒進と言います。
で、万が一冒進事故を発生させてしまった場合、輸送指令に報告してどうすればいいのかの指示を受けることになります。
ですがこの運転士はそれをせずに、黙って列車を元に戻そうとバックさせました。このことを退行と言います。
バックして何が悪いのと思われるかもしれませんが、もし列車の全てが先ほどの閉そく区間を抜けていた場合、次の列車がその閉そく区間に進入してきていて衝突事故になってしまう可能性があります。
今回は、転てつ器で脱線したみたいですけど、黙って事態を好転させようとした結果、余計に事態を悪化させる最悪の状態になりましたね。
個人的には冒進事故だけならまだ救いようがあったのに、事態をここまで悪化させてしまったら助けられるものも助けられずもったいないなぁと感じてしまいましたね。

運転士はどうなるのか?


皆さんが一番に疑問に思われるのはココだと思われます。
このような事故を発生させた場合、まず真っ先に行われるのは事情聴取です。
本線上でかつお客さんを死傷させた場合、当然警察に連れていかれ、そこで厳しい厳しい事情聴取が行われます。
ただ今回の場合、車庫線内の話なのでどちらかと言うと会社内での事情聴取が行われることが考えられます。
乗務区の上司はもちろんのこと、もっと会社のお偉いさんも出てきて、部屋に閉じ込められて厳しい事情聴取をされます。
その時、何をしたのか?、何でそんなことをしたのか?同じことを何回も何回も、入れ替わり立ち代わり質問され答えての繰り返しを延々と続けられます。
運転士自身が保身の為、嘘をつく可能性があるので、やばいぐらい圧力をかけられます
まぁそれだけのことをしても嘘をつく奴は嘘をつきます。
ただ最近は全部データで残ってますからね。
信号の現示はどうだったのか?運転士がどんなマスコン・ブレーキ操作をしたのか?全部分かります。嘘をついてもすぐバレます。
ただ自白って重要なんですよね。
会社としても、今後各方面への報告・発表を行わないといけないので厳しい取り調べになる事情も分からなくはないですが、まぁ私はそんな経験はしたくはないってぐらいヤバイですね。
そして本線上で今回の内容の事故をやってしまうと、お客さんの怪我の程度等によって異なりますが、最低でも免停、悪ければ免許取り消しにといった行政処分を受けることになります。
ただ今回は車庫線内の話なので、ちょっとややこしくて車庫線内を運転するだけの運転士なら厳密には運転免許はいらないんですよね。
本線まで入換を担当するような場合は免許が必要なのですが、この構内運転士さんがどのような免許を持っているのかが分からないので、どのような行政処分がくだるのかは不透明ですね。
じゃあしばらくすれば、また運転士として復帰するのと思われるかも知れませんが、現実的には厳しいと思われます。
何らかの行政処分を受けた場合や大きな事故を起こした場合、その職場に残ることは少ないです。
大体は、他の部署に飛ばされます
車庫線内を運転されている方なので、この方が運輸系の方なのか技術系の方なのか分かりませんが、運輸系で運転士なら駅員に飛ばされるような気がしますね。
まぁ降格ですね。
で、大体は周りの目に耐えられず退職するか、圧力をかけられ半ば強引に辞めさせられるまでがワンセットですね。
他人の振り見て我が振り直せじゃないですけど、もし同じようなことをしたらどうなるのか肝に銘じておく必要がありますね。

脱線した車両は右側

裏話

信号冒進の時点でちゃんと指令報告していれば運転士の職も助かったんでしょうけどね…
人間、ミスをしたら何とか隠したいのは人情だと思うんですけど、自分で処理できない範囲のことを隠そうとするのは良くないですよね…
黙って、退行して脱線までさせちゃうと、運転士っていうポジションが無くなってしまっても過言ではないです。
こうならない為に、事故が起こったらすぐ報告しましょうとか、過去に事故事例で運転士がどんな処分をくらったとか、適宜会社でアナウンスしてるはずなんですけどね…
まぁ自分は大丈夫だって考えてしまうんですかね…

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