ATSの地上子が壊れた時ってどうするの?【ゆっくり運転士の鉄道ニュース】

鉄道ニュース

普段は運転士を守ってくれる保安装置
ところが牙を向くと運転士が処分される恐れがあります。
異例時の取扱いミスでお客さんが怪我をする事態が発生しました。
今回はニュース記事を引用しつつ、 ATS、故障したら? 、なぜお客さんが怪我をしたのか?の3点に絞って解説します。
それでは出発進行。

北海道ニュースUHBより引用です。

JR運転士のミスで“非常ブレーキ”乗客4人けが【JR札幌駅】不具合を伝えられていたが必要な操作を忘れる…60代のベテラン運転士(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース
 15日朝、JR札幌駅の構内で、運転士の操作ミスにより列車の非常ブレーキが作動して乗客4人がけがをしたことが分かりました。  乗客がけがをしたのは「あいの里公園駅」発「札幌」行きの普通列車(6両編

引用終了。

一口にATSと言っても、会社によりその仕組みや動作方法が異なるので解説が難しい訳ですが、今回は記事の内容から推察していきます。
今回のトラブルがあったATS。
記事の内容からすると信号に対するATSで信号機の直下の地上子に不具合があったことが考えます。

地上子は線路内に設置されています

この地上子の役割を簡単に解説しましょう。
今、画面左手から電車が接近してきました。
前方の信号機は赤で停止現示。

前方の信号が赤なら?

当然運転士はこの信号機の手前に電車を止めます。

運転士は信号機の手前に電車を止めます

と思っていたら、運転士はこの信号を見落としてそのまま進んで、その前にいた別の電車と衝突。

ところが信号を無視して前方の電車と衝突

なーんてことが起こってはいけません。
信号機が赤と言うことは前方に別の電車がいたり、転てつ器が正当方向に向いていないということになるので事故に繋がる恐れがあります。
運転士がうっかり赤信号を超えて進まないように信号機の少し手前に今回問題の信号機の直下地上子が設置されます。
これは信号機と連動していて、もし信号機が赤ならばここの地上子から電車に対して、至急に止まるように信号を発します。

信号機の手前に地上子が設置され電車に対して信号を送ります

なのでもし運転士がうっかりしていたとしても…

運転士がうっかりしていても…

この地上子を通過した時点で電車が緊急停止して、信号機の手前に止まるような仕組み作りがなされています。

信号の手前で止まることができます

ちなみに赤以外の信号なら電車はここを通過することができます。
と本来の仕組みはこうなのですが、たまーに青信号なのに地上子を通過したときになぜかATSが動作してしまう時があります。

たまーに地上子がぶっ壊れて青信号なのに電車に停止情報を発信することがあります

まぁこの場合は地上子の故障が考えられのですが、その場合特殊な取扱いを行わないといけません。 

なぜ故障が起こるのか?
原因は様々ですが、まず1つとしてあげられるのは部品の経年劣化
定期的に点検しているとはいえ、所詮は電子部品。
どうしても壊れてしまうことがあります。
あとは外的要因
よくあるのが雷が落ちてぶっ壊れてしまうのがあります。
一撃数千万ボルトですからね。
信号装置もろとも逝ってしまいます。
地上子が故障した場合、往々にして電車に対して停止情報を発信してしまいます。
これはフェールセーフの考え方でそうなっているわけですが、運悪く壊れてから1本目電車の運転士が前方の信号が青なのに急に電車が非常停止してふぁっ!?ってなってしまうのがあるあるです。
こんな感じで地上子が壊れてしまうときがあるわけですが、このままだと電車を走らせることができません。

機械的・自然的様々な要因で壊れるときがあります

復旧するまで動かさないのも1つの手段ですが、それだと長時間の見合わせになってしまうことも考えられます。
なのでこの様な場合特殊な取扱いを行うことで、とりあえず電車を走らせることがあります。
ではどうするかというと、普通に通過してしまうと先述のようにATSが動作して電車が急停止してしまうことになります。
なので。一旦当該の地上子の手前で電車を止めます
で、運転士は指令に連絡して前方の信号機が進行して良い信号を現示していることを報告します。

地上子がぶっ壊れた場合、地上子の手前に止まって…

指令は運転士からの報告を聞いて、指令側でも今から進入させる区間に他の電車がいないことを監視盤で確認します。

運転士は指令とやりとりをします

問題がなければ運転士に対して一時的にATSの機能を解除して信号機を超えて進行してよいことを指示します。
運転士はこの指示を聞いて、運転室にあるボタンないしスイッチを操作して一時的にATSの機能を解除します。

OKなら一時的にATSの機能を停止して当該地上子を通過します

で、速度を落として当該箇所を通過することになります。
この時、注意しないといけないことは、当然ATSの機能を解除しているわけで、運転士を守ってくれるものはないということです。
なので極端な話、アホほどスピードを出して走行することも可能だと言うことです。
そうなれば結果、どうなるのかは皆さんご承知おきですよね。
ちなみに、一時的にATSの機能を解除しているだけで、次の地上子を通過すれば元に戻ります。
こんな感じで、故障している地上子から次の正常な地上子の区間を、運転士の注意力による方法で運転していくことになります。

普通に取扱いをしていればお客さんが怪我をしてしまうような事態はありません。今回、この取扱いができていなかった訳でその原因は単純に忘れていたということですが、似たような事象は往々にして発生しています。
その原因としてまず第1に考えられるのは知らなかった
事前に乗務区で言われたり、駅から伝えて貰ったり、最悪は指令無線を通じて、当該の地上子の手前に止まれよと指示を受けるわけですがこれがなされていなかった。
ほかにも、やったつもりだったパターン。
先述もしましたが、ボタンやスイッチを操作してATSの機能を一時的にストップさせるのですが、このスイッチの近くには別のスイッチが所狭しと並べられています。
なので隣の別のスイッチを操作してしまっていた。
あとはボタンを押したつもりがしっかりと押しきれていなかった。
こんな感じで過去には同種のトラブルも発生しています。

スイッチ・ボタン類は数が多いので、誤って操作してしまうことがあります…

とはいえ客さんが怪我をするまでの事態は稀で、今回は結構なレアケースですね。
ちなみにお客さんが怪我をした訳として、高速で突っ込んでお客さんが転倒したと思われるかも知れませんが、急停止による怪我は高速よりも意外と低速の方が起こる可能性が高いです。
というのもブレーキが一気にかかった衝動と止まった瞬間の揺れ戻しの衝動がほぼ同時に起こる、低速域の方がお客さんが耐えきれず転倒して怪我をするパターンが多いので、今回もこんな感じなんでしょうね。
駅に到着するにあたって、低速で入って行っていて地上子からの停止進行を受けて急停止。
お客さんからしたら急にブレーキがかかって、ドンと止まる。
つり革にしっかりと捕まっていないと体制を保持できないのは容易に想像できます。
なので、今回みたいに複数人のけが人が発生してしまっているんだろうなぁと推察することができます。
こうなれば人身事故扱いになってしまうので、会社としては一大事です。
この様な取扱いは普段は行わないわけで、数年ぶりにやったみたいな感じの温度感になります。
運転士としても日頃からの知識維持が大事なわけで、それをしっかりと行う実行力も大事になります。
普段は守ってくれるATSもときには牙を向いてくることには気を付けないといけないですね。

私はこの取扱いまだやったことがないんですよね。
以前、1度チャンスがあったときがあり、この取扱いをするからちゃんとしてやと事前告知があったにも関わらず、ちょうど私の電車の前で信号屋さんが頑張って復旧したみたいで通常運転し始めちゃったんですよね。
残念。

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