雪の日の車掌の苦悩 なぜ除雪していたら電車に取り残されたの?【ゆっくり運転士の鉄道ニュース】

鉄道ニュース

しっかり仕事をしていた車掌がなぜかホームに取り残されるトラブルが発生しました。
雪の季節の苦労話を現役運転士が解説します。
お仕事の裏話を知りたい人は是非最後までごらんください。
それでは出発進行。

毎日新聞より引用です。

5日午後9時55分ごろ、ジェイアール総武線都賀駅で、久里浜発佐倉行き下り快速列車がドアの開閉を行わずに発車するミスがあった。
同列車は駅に到着後、最後尾の乗務員室にいた車掌がホーム上の停止位置目標を車内から目視で確認しようとしたが積雪で見えなかったため、乗客のドアを開ける前に降車して雪をどけていた。
この際、一番前の車両にいた運転士がドアの開閉ランプの確認をし損ねたまま、乗客の乗り降りが完了したと思い込み、発車してしまったという。

JR都賀駅で車掌残し発車 乗客50人降りられず ホームに積雪で | 毎日新聞 (mainichi.jp)

電車が駅に到着したとき、車掌が真っ先に確認しないといけないことがあります。
それは電車が所定の位置に止まっているのかを確認することです。
ホームの床にはこの様な停止位置目標と呼ばれるものが設置されており、担当する電車の形式や長さに応じてどこに止まるのかが決められています

車種・編成長によって停止位置が変わります

車掌は所定の停止位置目標に電車が止まっていることを確認してドアを開けることが出来ます。
万が一この停止位置目標の位置に電車が止まっていないにも関わらずドアを開けてしまうと、ホームが無いのにドアが開いてしまう車両が発生する可能性があります。
一番ヤバいのが電車が過走したときで、電車の前がホームからはみ出ているにも関わらず車掌がドアを開けると、ホームに降りようとしたお客さんが転落してしまうかも知れません。

停止位置を確認していないと電車のドアがホームから外れている可能性が…

逆に大分手前に止まって車掌の位置がホームにまだ入っていないのにドアを開ける奴は頭がおかしいです。
あと最近はホームドアの加減で、停止位置目標に止まっていないとホームドアと電車のドアの位置が合わず、ホームドアが開かなかったりしてお客さんが降りれなくなるので、車掌が停止位置を確認するのはとても大事な作業になります。
さて車掌が停止位置を確認するときは基本的に電車に乗ったままの状態で確認します。

停止位置を確認する車掌

ところがこの日は運悪く雪が降っており、ホーム上は積雪していました。
先程、停止位置目標はホームの床に設置されているとお伝えしましたが、積雪があれば雪に隠れて見えなくなってしまいます。
ホーム全体を覆う屋根があれば大丈夫ですが、なぜか車掌の位置だけ屋根が無かったり、停止位置目標がホームの端に設置されていたりして、雪が降り積もることで停止位置目標がどこにあるのか全く分からない状態になります。

ホームに雪が積もると停止位置目標を確認できません

なのでこの車掌は電車から降りて、除雪して停止位置目標を確認してからドアを開けようと考えました。
この考えを実行しようとする時点でこの車掌さんは基本に忠実で仕事が硬い方なんだなぁと感じました。
ぶっちゃけた話、私ならどこに電車が止まるなんて停止位置目標以外の周りの景色を見て、経験上で大丈夫であると分かるので、除雪してまで停止位置目標を確認しようとはしないでしょうね。
言い訳になりますが、除雪道具もなく普通の革靴で足で除雪なんかしたら靴の中に雪が入り放題ですし、それが各駅ってなれば靴の中がグチャグチャになるのは分かっているのでやりたくないですね。
ただ流石に停止位置がずれていたら運転士に確認しますし、絶対の確信が無いとドアを開けませんけどね。

さて車掌さんが頑張ってホームに出て除雪している頃、運転士は知らせ灯の点灯を確認しました。
というか1回も消灯もしておらず、ずっと点灯していたわけですが、運転士はドアが開閉したと勘違いして電車を起動

知らせ灯を確認したのに…

結果、車掌がホームに置き去りになってしまいました。
知らせ灯式で電車を発車させる怖さがここに集約されていますね。
一般的な鉄道会社の場合、ドアの開閉が終わって電車を動かす際、車掌から運転士に対して出発していいですよとブザーやベルを使って合図をします。
しかしながら国鉄時代からの流れを踏襲してJR東日本ではドアが閉まったことを表す、知らせ灯の点灯をもって電車を動かすルールが実施されています。
他の鉄道会社同様、ブザー式にルールを変えろよと思われるかも知れませんが、それはそれで車掌の責任問題とかになったりするので、働いている側からしたら一長一短ですね。
システム的にもこの手のミスはどうしようもないと思うので、運転士の注意力に頼るしか防ぐ手立ては無いでしょうね。
注意力だけの事故防止は嫌いなのですが、ちゃんと知らせ灯が消えて再点灯したのか確認するしか防ぐ手立ての無いトラブルの紹介でした。

この手の車掌がホームに取り残された系のトラブル。
取り残されてどんな気持ちなのか?ってめっちゃ気になりません?
別に煽っているわけではないですよ。
一応身近にこの手のトラブルを経験した人がいるので聞こうと思えば聞けるのですが、聞いたら煽ってるみたいでなかなか出来ないんですよね…
なんて聞けば穏便に教えてくれそうか誰か教えてくれません?

コメント

タイトルとURLをコピーしました