連結の前に解放する京急の謎運用【ゆっくり運転士の旅行記】

旅行記

連結。
魅惑の響きのあるこの言葉。
運転士の裏話を交えつつ実際の作業風景を見に行きましょう。
それでは出発進行。

さて今回は京急の恐るべき連結を見に行きましょう。
と言うわけでまずは品川駅から京急に乗ります。
最初に乗る電車は快特羽田空港行。
京成3000系が担当ですね。
目的地に行く電車ではありませんが、この形式に乗った記憶がないので記念に乗っておきましょう。

まずは京成3000系に乗車

さて蒲田駅に到着。
この電車は空港線に行ってしまうので、一旦下車して本線の電車を待ちます。
普通逗子・葉山行に乗って今度は神奈川新町駅で下車。

1500系に乗って神奈川新町駅で乗換え

優等の退避待ちをするので乗換えます。
乗り換えのために降りた神奈川新町駅。
色々あった駅ですね…
そうこの踏切。

この神奈川新町1号踏切道で衝突脱線事故が…

あの一方通行の標識のある小道から右折してきた大型トラックが立ち往生して電車と衝突という痛ましい事故がありましたね。
事故調査報告書には踏切の異常を知らせる信号が確認しにくかった、また確認した地点からブレーキを取ったとしても止まりきるのが困難であったなどが書かれていました。
運転士の身としては色々考えさせられる事故ですね。
そうこう喋っているうちに乗りたい電車が到着。

次は特急に乗ります

特急三崎口行。
1500形が担当ですね。
さて降り立った駅は金沢文庫駅。

目的地に到着

ここでは朝ラッシュの時間帯、隣の品川方面行きの電車で増結作業が行われています。
3番と4番それぞれのホームで行われる連結作業。
実は作業手順が少し異なります。
さらに時間帯によっても変わる見ていて楽しい連結風景。
そのあたりをゆっくりと見てみましょう。

神奈川新町駅の3・4番線から浦賀方を望む

隣のホームに移動してきて、まずは早い時間帯の3番線での連結風景です。
浦賀方を観察すると、真ん中が金沢八景方面からの本線。
左が金沢検車区の車庫。
右が一時的に電車を止める留置線になっています。
今、浦賀方面から電車が到着します。
到着した電車の行先は特急金沢文庫となっていますが、この電車はこの駅から快特品川行きに変わります。
お客さんを乗せた電車が3番線に8両編成で到着します。
この電車はホーム区間内にある第3場内信号機を超えてホーム一番前で停車します。

3番線に到着した電車は第3場内信号機を超えてホーム一番前で止まります。

この時の場内信号機は注意信号を現示して電車に先に進行していいと指示しているのですが、この後重要になってくるので覚えていておいて下さい。
そして電車が止まった位置は場内信号機を少し超えた位置になります。

電車はホームの前合わせで停車します

旅客電車がホームに停車したころ、金沢検車区から空の増結車が到着します。
車庫から下り線を横断して上り線に転線して来ます。

車庫から増結車が到着

増結車は4両編成。
先程の8両とつないでこの駅から12両編成で運転します。
ホームに入った増結車は3両ほど入った所で一旦停止。

増結車はホームに入った所で一旦停止

止まっている間に前照灯を消して、そして発車します。
この間に何をしているかというと…
増結車は先程の第三場内信号機に停止信号が現示している為、信号機の手前で停車。
そして一番下の誘導信号機に白色灯が点灯することで、今度は赤色の旗を持った作業員の位置まで運転士は電車を動かします。

一番下の誘導信号機が点灯したことを確認して赤旗まで移動します

誘導信号機を超えて電車を走らせる場合、機械的な保安が無くなります。
なにげなく運転士は赤色の旗の所に止めに行っていますが、勢い余って止まり切れないってなれば前方の電車に衝突してしまうので注意して運転する必要があります。
赤色の旗を持った作業員の所で一旦停止した後は、作業員が緑色の旗を左右に振り電車に前進することを指示する合図を確認して運転士は再度電車を起動させます。

緑の旗が振られていることを確認して…

そして連結。

はい!連結!!

さて金沢文庫駅での連結作業の本領発揮はこれからになります。
3番・4番線でそれぞれ10分間隔で連結作業を行うので、5分に1回連結が行われていることになります。
本線を走行する電車の間を縫って、無理矢理車庫から電車を引っ張り出してくる京急の本気を観察しましょう。
車庫から増結車が出てきました。

車庫から…
増結車がやってきました

先程は4両編成の増結車でしたが、今回は4両+4両の8両で出てきました。
行先幕を確認すると、前は特急品川行き、後ろは快特品川行きになっています。
電車は車庫→下り本線→上り本線→4番線と渡ってきて、ホーム区間の転てつ器を渡りホーム横の引上げ線を進行して行きます。

ホームの横をかすめていきます

引上げ線を進行してきた電車はホームの横を進行して行き、そのまま品川方にある留置線まで移動します。
品川方の留置線は4線。

で品川方の留置線に行きます

本線寄りの2線は有効長が4両までみたいなので、8両対応している本線寄りから3つ目の留置線に入ります。
停止位置目標から約1両分手前で一旦停止。
そして所定の停止位置目標まで移動します。
さて、留置線までやってきた8両編成は何をやっているかというと…
中間の運転席にそれぞれ作業員さんが乗車して何かの準備を始めました。

連結している所でなにやら作業が始まりました

右側の電車の作業員が左側の電車に乗った作業員に声掛けをして…
運転席に引っ込まれてしまいました。
と、ここで左側の電車からブレーキの緩解音が…
そしておもむろに左側の電車がバック。
なんとこんな所で解放作業が始まっていました。

まさかここで解放作業をするとは…

8両編成を4両と4両に分割。
そして後ろ側の4両が元に戻るように浦賀方に進んでいきました。

解放した後ろ側がどこかに行きます

さてこの4両は一体どこまで行くのでしょうか…
また車庫に戻るのかな?
4番線の横の引上げ線を通ってきた4両編成は、車庫へは向かわず、上り線横の留置線に向かいます。

その行先は浦賀方の留置線でした

この留置線は車庫から本線を挟んだ反対側にあります。
わざわざここに4両を持ってきた訳、それはもう少しすれば分かります。
そうこうしているうちに左側の3番線には快特品川行き、右側の4番線には特急羽田空港行が同時に到着します。

3・4番線に同時に電車が到着します

今から3番線に到着した快特の後ろに増結車を連結します。
先程は車庫から4両編成を持ってきていましたが、今回は事情が異なるようです。
品川方の留置線で分割し、浦賀方の留置線に移動させた4両編成がこちらに進行して来ました。

留置線から電車が出てきて…

そう、3番線用の増結車を用意するために、わざわざこっちに電車を移動させていたんですね。

3番線用の増結車になります

そしてここからの連結作業は先程と同様のないようになります。
時は戻って、分割されて残された前の4両。
こちらも浦賀方に進んでいきました。

残された前4両も浦賀方に進みます

このまま先程と同じように浦賀方の留置線まで移動…
と思ったら減速音がして…
ちょうど4番線のホーム横に停止しました。

浦賀方の留置線まで行かずホーム横で止まりました

なぜこんな所に止まったのか?
すると運転士が浦賀方の運転席から品川方の運転席に移動し、今度は電車が品川方に進んできました。

止まった後に品川方に折り返してきて

なぜ戻ってきているのかと疑問に思っていると、向かっている先が異なりますね。
先程は画面左側の8両が止まれる留置線で解放作業を行っていましたが、今回は右側の4両までが止まれる留置線に入って行きました。

本線寄りの留置線で止まりました

品川方の留置線に入った4両編成。
この電車は4番線用の増結車になります。
それでは4番線の連結風景を見てみましょう。
特急青砥行が到着です。
運転士はホーム中ほどにある「併8」の位置に電車を止めます。

4番線に電車が到着してホーム中ほどに止まります

旅客電車がホームに到着したころ、増結車が品川方の留置線からホームに向かいます。
先程の3番線での連結は浦賀方に増結車を繋いでいましたが、4番線では品川方に増結車を繋ぎます。

品川方の留置線から増結車が到着

増結車はホーム中ほどの入換信号機の手前で停止します。

増結車はホーム中ほどの入換え信号機の手前で一旦停止

入換信号機の下の誘導信号機が点灯したことを確認して、増結車は赤色の旗の位置まで移動します。

入換え信号機の下の誘導信号機を確認して赤旗まで移動します

ちなみにこの赤色の旗は手信号といい、昼間は旗を使っていますが夜間は合図灯、ざっくり言うと懐中電灯みたいなものを使います。

ここまで近づいて止まるの💦

この距離まで近づけるのは凄い…
そして緑色の旗を確認して連結。

そして連結!!

以上が4番線での連結風景です。
金沢文庫駅では不思議な連結風景を見ることが出来ました。
なんでわざわざ、8両を分割して4両にしているのか?
考えられる要因は2つ、線路容量と人手です。
車庫から電車を持ってくる場合、下り上りの両方の線路を横断しないと行けません。
基本的には本線の電車が優先なので合間合間に電車を移動させないと行けませんが、ラッシュ時間帯になれば本線を走る電車が多くなるので中々隙間時間がありません。
そうなれば本線の電車を止めてでも移動させないといけなくなります。
4両よりも8両の方が移動させる電車の本数を減らせるので、無駄に本線の電車を支障してしまうことを無くせるメリットがあります。
そして車庫から電車を移動させると言うことは当然誰かが運転しないといけません。
車庫から電車を持ってくると言うことは誰かが車庫に電車を取りに行かなければなりません。
留置線で解放すれば運転士が駅構内を移動するだけなので車庫に行く時間を短縮することが出来ます。
そんなこんなで解放する手間があるとしても8両で車庫から出すオペレーションが行われているんでしょうね。
そんな金沢文庫駅のご紹介でした。

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