運転士への道のりPART.16 最後の試験 乗務試験

運転士になるまで

ひとまずはこの試験


運転士になるための最終試験には大きく分けて2つの試験があります。
実際の電車に乗って運転技術を試験する乗務試験
車庫の中で電車の故障や緊急時の対応を試験する車庫試験
一気に解説すると長くなるので、今回は乗務試験について解説します。 

乗務試験って?


お客さんが乗車する実際の電車を運転して試験を行います。
運転するのは見習いの私、横に師匠が乗って緊急時に対応し、試験官が2人で採点。
そして最後に見守りで乗務区の助役が何人か電車に乗車します。
当然全員が乗務員室の中に入ることが出来ないので、客室内にも立って私のことを見守っています。
もしかしたら皆さんも、運転席の周りで何人もの人が前を見てなんかしている異様な光景を見たことがあるかも知れませんね。
それ、見習い運転士が最後の試験をやっている場面ですね。
当然見習いはガチガチに緊張して試験をやっています。
見習い期間中に何回か試験と同じ様な練習をしているとはいえ、電車の形式、天候などなど毎回運転する条件は異なるので、電車のご機嫌を伺いながら一発勝負の試験を受けます。
これから数十分の間で様々な課題をこなしていきます。
それでは詳細をお話ししましょう。

距離目測


距離目測とは、指定された対象物までの距離を答えるものです。
例えば、次の信号機までの距離や標識までの距離は何メートルか、運転中に聞かれます。
大体、100~500mのものに対して試験を出されるわけですが、皆さん答えられそうですかね?
一応ぴったり1m単位で答えられないといけないわけではなく、50m単位で答えられたら減点無しになります。 
それを外れた解答になれば当然減点が入ります。
一応攻略法としては、電車に電気を供給するための線を支える架線柱ってものがあるんですが、この架線柱は基本的に等間隔で設置されているので、本数を数えて距離を出すっていう荒技もあります。
距離目測は、見習い期間中に師匠からあそこ何メートルって感じで練習させてもらって、何回かすれば大体分かるようになるので、難易度としてはそんなに高くはありません。

次の信号機まで何m?

速度目測


速度目測は2つの試験があります。
まず1つ目が、皆さんTVの運転士の特集などで速度計を隠されて今の速度をあてることをやっているのを見たことは無いですかね?
それをやります。
まぁTVでやっているような細かく加減速をして何キロかをあてるようなことまではしませんが、低い速度、中くらいの速度、高い速度の3回に分けて何キロかを答える試験をします。
試験官の指示通りにマスコンを操作して、当然ぴったりの速度を答えれたらいいですが、大体出ている速度の1割ぐらいの誤差なら減点なしで、それ以上違う速度を答えると減点されていきます。
そしてもう1つが、試験官が指定の速度を言うので、その速度になるように自分で加速減速をする試験になります。
これも違う速度帯で2回試験しますが、タダの速度を答える先程の試験よりもシビアです。
というのも、試験官が指定した速度よりも1km/hでも高かった場合、めちゃくちゃ減点されます。
なので例えば、40km/hと指定されたのに50km/hぐらい出しちゃうと、それだけで一発不合格になります。
逆に指定速度より低かった場合、1割までの誤差なら減点無しなので、37、38km/hを狙って速度を調整していきます。
枕木の流れる感じ、風切り音、継ぎ目の音などで大体の速度を狙っていくわけですが、いくら事前に練習しているとはいえ、本番は緊張してしまうものです。
速度が高いと一発不合格って言うのが分かっているので、安全側でなるべく低い速度に調整しようと思い芋ってしまって、速度が低くなりすぎて不合格になってしまう人がちょくちょくいます。
速度目測中は速度計を隠されて試験をやっているので、目隠しが外されて自分の目で速度を確認するまでめちゃくちゃ不安な試験になります。

走っている時に中央右の速度計を隠されます

運転操作


この項目の中にも色々な試験内容が含まれています。
まず、運転時分
次の駅まで何分何秒で走れるかの試験です。
まぁ普通に運転すれば特に引っかかるような項目ではありませんが、制動にびびって手前からゆっくりブレーキをかけちゃうと時間超過してしまう恐れがあります。
そして制動機の操作
駅が近づいてきたらブレーキをかけて電車を止めるわけですが、そのブレーキのかけ方は一段制動三段緩めを厳守しないといけません。
一段制動三段緩めとは、まず最初に強いブレーキをかけてその後3回に分けてブレーキを緩めていくことを言います。
例えばまずB5のブレーキを取って後は、B4→B2→B1と緩めて電車を止めれば減点無しです。
でも例えばB5→B4→B2と緩めたのに、電車が止まらないと判断してB4ともう一回強いブレーキをかけ直してみたり、B5→B4→B3→B2→B1と3回を超えてブレーキを緩めてしまうと減点対象になります。
ちなみにブレーキのステップをどれだけ取るのかは採点基準にはないので、ギリギリまで突っ込んでB7で一気に電車を止めに行く人もいますし、運転時分が超えない範囲で手前から緩くかけてB4→B1みたいな感じで緩く止める人もいます。
どうやって止めるのかは個人の好みですが、止まる瞬間には衝撃が無いようにしないといけません。
というのも、駅に電車を止めるときには衝動棒と呼ばれるもので、止まる瞬間に衝撃が無いのかも確認します。
それぞれ衝動棒には様々な太さがあり、太い衝動棒が倒れれば倒れるほど、衝撃が大きいと判断され減点されます。
余程のことがないと減点されるような衝動棒は倒れないですが、うっかり止まる瞬間にブレーキを緩めるのが遅れてしまうと倒れるリスクがあります。

これが衝動棒 数字が大きいほど強い衝撃で倒れる


一段制動三段緩めで衝撃無く電車が止まりました。
ではいま止まっている位置はどこでしょう?
停止位置目標に対してどれだけの誤差で止まれたかも試験内容に含まれます。
前後1m以内なら減点無しですが、万が一1mを超えてしまうと減点対象になります。
そして停止位置目標の手前に止まってしまった場合はまだ傷が浅いですが、停止位置目標を超えてしまった場合、手前に止まってしまった時よりも減点の割合が高くなってしまいます。
最後に当然安全に電車を走らせることも試験内容になります。
信号機や標識を確認喚呼。
速度を落とさないといけないカーブなどではしっかりと減速。
ATSなどの保安装置を動作させない。
こんな基本的なことができないなどお話になりませんが、万が一抜けたり、間違ったりするとそれだけで一発不合格です。

停止位置目標にピッタリと止まっているのかも重要

1番の鬼門は?


乗務試験は減点方式の試験です。
なのでいかにミス無く、減点されないようにするのかが重要で、1番の鬼門が制動器の操作です。
なるべく減点無くいきたいので、一段制動三段緩めでぴったり停止を狙っていきますが、毎回毎回上手くいくことはありません。
ブレーキをかけるタイミングが微妙に遅くなったり、早く緩めてしまったりして停止位置目標に対して電車が止まれるのか微妙な時があります。
ブレーキを入れ直しちゃうと減点になるので、なるべく粘って本当に止まるのか見極めて、ダメなら減点はしょうがないので早くブレーキを入れ直すことが大事です。
1番最悪なのが粘りすぎて、停止位置目標を過ぎる間際に止まらないと判断してブレーキを入れ直したけど、間に合わず停止位置目標を行き過ぎて止まって、しかも慌てて衝撃もあったとなれば目も当てられません。
制動器の操作は複数の駅で実施されるので、もし一駅目で大きく減点されるとあとはミスが出来ないとプレッシャーを受けることになります。
逆に十分合格ラインにいたとしても、最後の一駅で大きく減点されて不合格になることがあるので最後まで気の抜けない試験になります。

やっぱりブレーキをかけるのが一番難しい

気になる結果は?


さて気になる結果ですが。
乗務試験は無事に合格です。
1番心配していた制動器の操作はまさかの満点。
行き過ぎてはダメだ。欲を出してぴったり止めようとか思わず、手前手前に止めるんだの精神で全駅やや手前に止めて減点無し。
唯一減点されたのは速度目測の試験でしたね。
出ている速度より速い速度を答えたので減点されてしまいましたね。
ひとまずは乗務の試験が終わって一安心ですが、これから車庫試験が始まります。
引き続き気を引き締めて挑まないといけないですね。

裏話

実は見習い期間の半分ぐらいの所で、今回の最終試験と同じ試験内容で模擬試験が実施されるんですよね。
それまでの期間でどれだけ習熟出来ているのかを確認するもので、その後の見習い期間に生かしてもらおうってものなんですよね。
今だから言える話ですが結果は、同期が何人かいる中で断トツの最下位でした。
自分の思ったブレーキがかけられずイライラしましたし、試験官には怒られるし散々でした。
まぁ私が唯一、合格点に達していなかったんでしょうが無いですよね。
ただその後の見習い期間では、どうすれば試験に合格できるのかに焦点を絞って練習できましたし、最終試験では同期の中で一番いい成績でしたし、終わりよければ全てよしですねww

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