運転士になるための最終試験 車庫試験編【車掌が運転士になるまで】♯17

運転士になるまで

はじめに

無事に終わった乗務試験。
ほっと一息をつくまもなく次の試験が実施されます。
しかも覚える範囲は乗務試験よりもだんちで増えます。
さぁ合格できるのか?
解説します。
それでは出発進行。

車庫試験って?


車庫試験も複数の科目が実施されます。
まずは出庫点検
そして故障対応
最後に事故対応
なんと3科目も試験されます。
それぞれ制限時間が設定されていて、いかに早く適切な処置を行えるのかが試験で問われます。
時間超過は減点対象になり、あまりにも時間がオーバーすれば試験終了。
当然不合格になります。
でもいくら早く処置を行ったとしても、その処置が適切ではないと判断されれば減点の対象になりますし、もし電車の運転に対して安全を著しく欠いた処置を誤ってやってしまった場合は一発不合格です。
時間、処置が適切でないと減点されますが、合格点を下回らなければ問題はありません。
なので1つ2つの間違いなら合格できますが、少々間違っても大丈夫だと思って試験を受けるととんでもない目にあいます。
完璧だと思って試験を受けても人間なので抜けはありますからね。
それでは1つずつ内容を確認しましょう。

出庫点検


電車を車庫から出すときに機器が正常な状態であるのかを点検するのが出庫点検です。
さてここで問題ですが、どれくらいの箇所を点検しないといけないと思いますか?
まぁ編成の長さによって数は全然変わるんですけど、試験で確認しないといけない箇所は軽く100カ所を超えます
もう一度言います。
100カ所を超えます。
どんな所を点検しないといけないのか軽く解説しましょう。
まずあなたは自分が担当する電車の前にやってきました。
ではその電車があなたの担当する電車で間違えないのか確認します。
同じ様な顔の電車が並んでいますからね。
電車の番号をちゃんと確認しましょう。

違う電車の点検をしていたってトラブルもあるのでちゃんと電車の番号を確認しましょう


確認できたら電車に乗り込みます。
乗り込んだら電車に電気が来るようにパンタグラフをあげて電車を起こしてあげましょう。
電車が起き上がったら、必要箇所を点検していきます。
運転台にはこの様なスイッチが沢山あります。
このスイッチ達が入りにしないといけないものは入りに、切りにしないといけないものは切りになっているのか確認します。
次に、動作させないといけないものが正常に動作するのか確認しましょう。
例えば前照灯の様に点けたり消したりするものがちゃんと点灯、消灯することを確認します。
動作確認が終われば電車を動かす試験を行います。
まずはブレーキが緩むのか?そしてブレーキステップによって必要なブレーキ圧力が入っているのか確認します。
勿論ブレーキハンドルを非常位置にしたとき、ちゃんと非常制動がかかるのかも確認します。
ブレーキが正常に機能していることが確認できれば電車を動かしにかかりますが、その前に一番大事なことをしないといけません。
そう、手歯止めを取りに行きましょう。
電車を車庫などに置いておく場合、当然ブレーキをかけていますが、長時間止めているとブレーキが緩んでしまうことが考えられます。
そうなると勝手に電車が走り出してしまうので、そうならないために車輪とレールの間に手歯止めというものをつけています。
宅配業者のトラックでも使用されているものですね。
これを取らないと電車が手歯止めに乗り上げて脱線する恐れがあります。
ちょうど某青い鉄道会社がやらかしたことですね。

線路に降りて絶対に手歯止めを取りに行け!!


試験中この手歯止めを外し忘れて次のステップに進むと強制終了で試験は不合格です。
で、手歯止めが取れれば電車を前進と後進させて正常に動き出すのか確認します。
正常に電車を動かすことが出来たら今度は反対側の運転台に移動します。
車内を移動するわけですが、なんとなく移動すれば良い訳ではありません。
車内にもある機器が正常な状態か?またお客さんが触れないようカバーされているところは適切にカバー出来ているのかも確認する必要があります。
反対側の運転台に移動してきたら、運転台のスイッチを確認するところから電車を動かすところまで同じ確認をします。
確認できたら次は線路に降りて、床下機器が正常な状態であるのかを確認します。
床下点検が終わればこれで出庫点検は終了です。

故障対応


電車を運転していると時に車両に故障が発生します。
例えば、駅を発車しようとしたらブレーキが緩まない
加速しようとノッチを入れたのに電車が動き出さない
電車は動き出すけどいつもより加速が遅いなどなど様々なトラブルが発生します。
この様なトラブルが発生した場合、運転士は関係各所と連絡を取りつつ、故障時のマニュアルを見ながら最低限電車が走れて車庫まで運転するために、必要な応急処置をすることが故障処置になります。
実際の現場でトラブルが発生したときは先述の通り、マニュアルがあるのでマニュアルにそって1つずつ処置することが出来ますが、今から行う試験では処置内容を全て暗記する必要があります。
どんな試験内容かによって異なりますが、大体10~20分ぐらいの試験時間いっぱいいっぱいを使って動きっぱなしで処置していきます。
例えばブレーキが緩まないが試験内容だったと仮定しましょう。
まずは自分の運転席でちゃんとブレーキハンドルをB0位置にしたのかを確認します。
最初は機械の故障を疑う前に自分のミスを疑います。
ブレーキハンドルが緩んでいるにもかかわらず、ブレーキが緩んでいないとなれば原因が別の所にあると判断されます。
では次に、車掌が電車を緊急停止させるために車掌弁を操作していないかを確認します。
自分のミスを疑った後は、知らないうちに電車を止めにいっていないのかを疑います。
人間の手で電車を止めることを行っていないとすれば、ようやく機械の故障を疑います。
ブレーキを緩める指令がおかしい電気系の故障なのか?それとも制輪子が車輪を抱きかかえてしまっている機械系の故障なのか?
こんな感じでブレーキが緩まない原因を1つずつ探っていって、原因を特定し応急処置をするのが故障対応です。

ブレーキが緩まない?まずはハンドルが緩んでいるのかを確認しましょう


事故対応


電車を運転していると時に事故に遭うことがあります。
例えば、ホームから人が飛び込んできた踏切で車が立ち往生している電車に火災が発生したなど様々な事故が発生します。
この様な事故が発生した場合、電車の安全を守るために運転士が取るべき行動を試験するのが事故対応になります。
実際の事故を想定した試験内容になるので試験時間は30分越え。
他の車庫の試験と比べて長丁場の試験なので、気候が悪いとマジで地獄です。
それでは目の前の踏切で車が立ち往生していたと仮定しましょう。

あっ!!目の前に車が…


まずは当然非常ブレーキをかけることも大事ですが、必ず電車が接近していると相手に伝えるため警笛を鳴らさないといけません。
努力空しく車と衝突した場合、まずは対向列車に対して事故の発生を知らせなければなりません。
一昔前なら乗務員が自ら走って付近の電車を止めに行ってましたが、今は防護無線のボタンを押すだけで付近の電車に緊急停止を知らせることが出来ますし、輸送指令に連絡して他の電車に停止の指示を出してもらうことも出来ます。
ここまでの手順が済んでようやく事故の処理を行うことが出来ます。
車に乗っていた人を救助、車の撤去、電車や鉄道施設の損傷確認、必要に応じて応急処置。
実際の事故では警察や消防、そして車両や電気・線路のそれぞれの分野から応援が来てくれるので協力して事故処理をしますが、試験では全て1人で対応する力を確認されます。
なので電車の周りをグルグルと走り回ることになりめっちゃ疲れます。
こんな感じで、事故が起こりそうな時に何をしないといけないのか?そして事故が発生した時にどんな手順で復旧するのかを試験するのが事故対応です。

気になる結果は?


気になる結果ですが
無事に合格です。
ミスもなく、制限時間もオーバーすることもなく満点合格でした。
試験中ってどっかで抜けたりミスをしてない?不安になったりもしましたがなんのミスもなかったのは良かったですね。
しかも断トツの速さで試験をこなしていたので褒めて貰うことも出来ました。
さぁ試験が終われば後は免許を貰うだけ、次回は念願の免許授与の様子と独り立ちした運転士の気持ちについて解説します。
乞うご期待。

裏話


試験の前にはみっちりと練習をすることになります。
同期同士で試験官役を決めて、お互いにダメな所はダメだししたり、いい所は真似たり、和気あいあいって感じで練習します。
ここでちゃんと頭と体に内容を覚えさせておけばなんとかなりますが、当日に緊張してとか時間を気にしすぎてとか不確定要素は色々あります。
致命的なミスをすることだけに気を付けて、少々のミスはしょうがないと割切って試験することが大事ですね。

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