雪で立ち往生した電車 融雪装置はいつ使うべきか?【ゆっくり運転士の鉄道ニュース】

鉄道ニュース

はじめに

不思議でしかありませんでした。
会社によって基準が違うとは言え、判断が甘いと言われてもしょうがないと思います。
そんなニュースが飛び込んできました。
それでは出発進行。

ニュースを引用


東海道線の立ち往生は24日夜~25日朝、高槻(大阪府)―山科(京都府)間で発生。15本の乗客計約7000人が最長で10時間近く車内に閉じ込められた。同区間のポイント21か所が雪で故障したためだった。
JR西は、ポイントの雪をとかす装置を作動させる予想降雪量の目安を「6時間で10センチ」と定めている。予想は8センチだったため作動させなかったが、実際は京都市内で15センチ積もり、ポイントの故障につながった。
阪急、京阪、近鉄はいずれも装置を作動させる予想降雪量の目安はないが「今季最強の寒波」を警戒し、京都を通る路線で23日夜~24日未明に装置を作動。3社ともポイントの故障は起きなかった。

読売新聞オンライン

さて皆さんも既にご承知の通りだと思いますが、雪の影響で多くの列車が駅間で取り残されるトラブルが発生しました。
なんでカンテラを焚かなかったのか凄く疑問でしたが、こんな社内規定になっていたみたいですね。

感想

鉄道会社では電車を安全に走らせるために様々なルールが決められています。
1番よく分かりやすいのは雨が降ったときで、1時間あたりの降雨量が何ミリになったら速度規制、何ミリ以上なら運転見合わせと気象条件によって電車の運転の可否を判断したりします。
JR西日本では降雪が予想されたとき、どれぐらい積もりそうかで転てつ器の雪を溶かす装置を動作させるのか否かを判断していたみたいですね。
関西圏で降雪する機会は少ないとはいえ、予報だけで動かすのか動かさないのか判断するのはちょっと頂けないですよね。
あくまで積雪量の予報は予報であって実際どれだけ降るのかはその時々ですからね、今回は悪い方に転がってしまいましたし…
では転てつ器に雪が積もるとなぜヤバいのかについてお話ししましょう。

雪が積もるとヤバイ訳

転てつ器とは1つの線路を2つ以上に分岐する装置のことを言います。
線路を分岐させるものなので、レールの先端部分が右へ左へと動くわけですが、この動く部分に雪が入り込むと上手く動けなくなり転換不良が発生します。
本当は右の線路に切り替えたいのに雪が噛みこんで上手く線路を切り替えられていないと、もしこのまま転てつ器を電車が通過すれば脱線するなど重大事故が発生してしまいます。
あとは転てつ器自体が凍結して切り替えれないこともあります。

転てつ器に雪が詰まると転換できなくなります

転換不良が発生すれば、現地に係員が急行して、雪を除去して転てつ器が正常に動作することを確認してようやく電車を運転することができます。
1つの転てつ器の転換不良を元に戻すためにも時間がかかるのに、同時多発的に複数の転てつ器が転換不良を起こしてしまい、今回のようなトラブルになってしまいました。
しかも雪がやまなければせっかく転換不良を直したとしてもすぐ同じ状態になりますからね。
ではこの様なことが起こらないためになにをすれば良いのでしょうか?
それは転てつ器の融雪装置を動作させることで、転てつ器に雪が降っても溶かして積もらないようにします。
融雪装置には大きく分けて2種類あり、電気式と融雪カンテラがあります。

レールの下に融雪カンテラがあります

電気式は転てつ器のレールにヒーターが取り付けられレールを温めるものと、ヒーターで温めた熱気をレールに風で送るものがあります。
スイッチ1つで作動させることが出来るので、手間がなくすぐに動作させることが出来ますが、導入するのにお金がかかる難点があります。
もう1つの融雪カンテラはでっかいアルコールランプみたいなもので、灯油を燃料にして直接火でレールをあぶって雪を溶かすものです。

これが融雪カンテラ

融雪カンテラは冬の前に転てつ器に設置しに行って、使いたい時には火をつけに行って、使い終われば火を消して、次に備えて灯油を給油、そして春になれば撤去と少し手間はかかりますが、安く設置できるので古くから使われてきた物になります。
ではいつ融雪装置を使うのかですが、私の感覚なら事前に積雪の予報があるなら雪が降り始めた時点でつけますし、積雪の予報がなくてもこの降り方は積もりそうだなぁと思えば融雪装置をつけるような感じでした。
この判断は現場でして、運転指令に融雪装置をつけますと連絡するようなプロセスでした。
ただ1つ注意しないといけないのは電気式なら事前準備は必要ないのですが、融雪カンテラは事前に設置して置かないととてもじゃないですけど間に合わないです。
ではJR西日本ではどうなっていたかというと、予報の積雪量に応じてつけるのかが判断されていたみたいですね。
個人的にはこのルールがマズいなぁって感じですね。
予報と結果が違うことは多々ありますし、指令ではどれくらいの雰囲気で雪が降ってるとは分からないですからね。
予報も大事ですが、現場の駅員が必要だと判断すれば、融雪装置をつけれるようにしないといけないでしょうね。
ただ1つ擁護するとすれば、普段そんなに積雪する所ではないので、融雪カンテラで運用されていると思うんですけれども、京都みたいな広い駅構内だとめちゃくちゃ転てつ器の数があります。
しかも駅から遠かったりするので、事前の設置、当日の点火、後日の給油など1回動作させるだけで、かなりの人手と時間を要することになります。
通常の業務をしながらだと人手が厳しいと思うので、増員を考えないといけなくなるのが判断を狂わしたかもしれませんね。
ただ付近を走行する他の鉄道会社ではこんなことが起こっていないのでルールの変更が急務でしょうね。

裏話

融雪カンテラを使ったときに火をつける作業はめっちゃ楽しいんですけど、給油する作業がめっちゃめんどくさいんですよね…
蓋を開けて、灯油を入れて、また蓋をする。
注ぎ方をミスったら服にかかって汚れますし…
大体はでっかいポリタンクに灯油が入っていてそれを線路脇でやかんに入れ替えて、お茶を入れる要領でカンテラに給油する感じでしたね。

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