大阪駅で電車が勝手に動いたトラブル現役運転士が解説【ゆっくり運転士のひとりごと】

ひとりごと

はじめに

ドアが開いているのに電車が動くトラブルが発生しました。
基本的には保安装置で電車が動かないわけですが、抜け道があります。
どうしてこんなことが起こったのか?
現役運転士が解説します。
それでは出発進行。

電車のドアが開いたまま発車したトラブルを解説

なにがあったのか?

5月23日、大阪駅で停車していた京都発西明石行きの普通電車がホームに停車していた際に、電車のホーム側のドアが全て開いたまま約10メートル移動するトラブルがありました。
乗客が撮影した動画を確認すると、10秒ほどの動画で扉1枚分移動していたのが分かります。
ではなぜこんなことが起こったのか深掘りします。

なぜ電車が動いたのか?

電車を駅から発車させるための手順として車掌がまずドアを閉めます
この時ホームドアがある駅ではホームドアも閉めます
その後車掌は全てのドアが閉まったことを確認して運転士に対して発車合図を送ります

車掌はドアとホームドアを閉めて運転士に発車合図を送ります

運転士は車掌からの発車合図を受けて、ブレーキを緩めてマスコンを入れることで電車は加速していきます
とこれが正規の手順ですが、この車掌は何を思ったのかホームドアを閉めたことに満足して電車のドアを閉めること無く運転士に発車合図を送りました。

ホームドアを閉めたことに満足してドアを閉めたかった…

運転士は車掌からの発車合図を受け、ブレーキを緩めてマスコンを入れました。
全てのドアが閉まっていれば電車が加速していきますが、この時電車は加速しませんでした。
と言うのも電車の保安装置があり通常であれば編成中のいずれかのドアが開いていた場合、運転士がマスコンを入れたときでも電車が加速しない仕組みになっています。

本来電車のドアが開いたままだと動かないはずなのに…

ところが今回は電車が動いてしまった。
なぜかと言うと大阪駅は神戸方に向かって緩やかに下り坂になっており、ブレーキが緩んだことで電車が動き出したとのことです。
ちなみに下り坂によって電車が勝手に動き出すことを転動といい、この様な事象はたまに発生しています。
よくあるパターンとしては電車が止まったあと運転士はブレーキをかけておくわけですが、乗務交代をするときなど誤って手や足が当たってブレーキが緩んで転動してしまうことがあります。
運転席が狭い電車でなりがちなのですが、この場合運転士もすぐ気付くのですぐにブレーキをかけ直して、一瞬動いてすぐ止まるといった感じになります。
ところが今回はかなり移動してしまいました。
本来であれば今回のように電車のドアが開いた状態で転動などで動き出した場合にも保安装置あり、ドアが自動で閉まったり非常ブレーキがかかったりします
ところがその保安装置が動作しませんでした。
Twitterにアップされていた動画を確認すると10秒間で電車がドア1枚分移動していました。
ドアとドアの間隔は約4メートルなので、時間と距離から速度を計算すると時速1.4km/hになります。
電車が動き出したと検知して保安装置があると先述しましたが、この保安装置が働くのは時速3~5キロほどにならないと検知出来ません。
もう少し加速していればひとりでにドアが閉まるなり電車が止まるなりしたのでしょうが、残念ながら今回はそこまで加速していなかったのでなにも起こりませんでした。
複数の保安装置があるにも関わらず今回は全てその目を掻い潜ってしまった訳ですが、個人的には運転士がもっと早い段階で処置できたのでは無いかと思ってしまいます。

運転士が悪い?

多くの皆さんがまず初めに思われるであろう疑問。
パイロットランプを見ていなかったのか問題があります。

運転士はパイロットランプを見ていなかった?

パイロットランプ又の名を戸閉め知らせ灯と言いますが、運転席の正面に設けられた表示灯でこの表示灯が点灯すると全てのドアが閉まっていますよと運転士に合図するものです。
電車でGOをやると電車を動かすとき、「戸閉め点」と行った喚呼を聞いたことが無いですかね?
あれはパイロットランプが点灯したことを運転士が確認しているわけですが、運転士が電車を動かす前にパイロットランプの点灯確認が義務付けられているのかいないのかはその会社によって異なります。
車掌から発車の合図が無い会社はこのパイロットランプの点灯を確認するのは必須ですが、車掌から発車していいよとブザー合図があるような場合、車掌がドアが閉まっていることを確認しているのでパイロットランプを特段確認しなくても良い場合があります。
なのでパイロットランプを見ていなかったことに関して運転士が責められるのかはその会社の規定によって異なります。
個人的に一番気になるところと言えば電車が動き出してから止まるまでまぁまぁの時間があったことです。
先程、ざっくり計算で電車が時速1.4km/hまで加速したと計算しました。
報道によるとこの電車は動き出してから止まるまで約10m移動したとのことなので、先程の速度から移動した時間を計算すると25秒
車内のお客さんが異常に気付いてスマホを取り出して10秒ほどの動画を撮影したことを考えると十分にありえそうな時間ですね。
この25秒という時間が短いと考えるか長いと考えるかは様々ですが、個人的にはもうちょい早く止められたのではと思ってしまいますね。
ブレーキを緩めてマスコンを入れる。
勾配で若干加速したとはいえ、明らかに加速が悪い。
あれ?なんでって運転士は思ったことでしょうね。
車両故障?って電車が加速しない原因が色々頭の中を駆け巡る訳ですが、ここですぐにパイロットランプに目がいってドア開いてるやんとなれば理想型ですが、なかなかそうはなりません。
ただ車両故障を疑って1回マスコンを戻してもう1回入れ直したとしても、もう少し早く電車を止めれそうな気がしますね。

ノッチを持ったのに電車が動かない恐怖は計り知れない…

まぁその現場がどんな状況だったのか分からないのでなんとも言えないですけどね…
とはいえそもそものトラブルの原因としては車掌がドアを閉めていなかったことです。
ドアを閉め忘れることなんてありえるのと思われるかも知れませんが、この様に考えられないミスは時々発生します。
1人がミスしたとしても誰か他の人が気付けたり、機械が次のトラブルを防いでくれたら良いですが、今回は残念ながらそんな状況ではありませんでした。
保安装置があるから大丈夫と過信しすぎずに自分の仕事をきっちりと全うする必要がありますね。

裏話

人間って惰性で仕事していると今回みたいにドアを開けたまま発車合図を送るみたいなとんでもないことをするんですよ…
例えば駅に着いたのにドアを開け閉めをすることをせずにそのまま運転士に発車合図を送る車掌もいてましたし…
こんなこと普通考えられます?
お前の仕事は何やねんww
話を聞いて仰天しましたもん。
惰性でやった原因が、疲労なのか個人の資質の問題なのかによって重要度は変わると思いますけどね…

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