電車の運転士ってどこまで運転できるんですか?【ゆっくり運転士の質問返し】

質問返し

甲種電気車運転免許を持っていればどこまでも電車が運転できる。
なーんてロマンのある話ですが、実際にはそんなことはありません。
そこには会社のルールと人間の限界があります。
最後までご覧頂ければ、電車を運転できる法律的な範囲と実際の現実の差を知ってもらえると思います。
この動画では運転士はどこまで運転できるのか?質問内容を確認しつつ、甲種電気車運転免許・会社の壁・乗務区の壁・制約の弊害の4点に絞って解説します。
それでは出発進行。

こんな質問を頂きました。

運転士ってどこまで運転できると思います?

今回はこの質問にお答えしましょう。

鉄道を運転するためには様々な免許があります。
例えば新幹線電気車運転免許、甲種内燃車運転免許みたいな感じで様々なものがあります。
イメージで言えばバイクを運転するなら普通二輪免許、普通乗用車を運転するなら普通自動車第一種運転免許といった感じで、自身が乗りたい種類の車両ごとの免許を求められる自動車免許と同じ感じです。
ただ一つ違うのは、普通自動車免許を持っていれば原付に乗れるみたいな特典は鉄道免許にはなく、あくまで取得した種類の車両を運転できるだけになります。
そして大多数の運転士が持っている免許が甲種電気車運転免許。
この免許があれば、こんな列車やこんな列車。
そしてこんな列車を運転することができます。

甲種電気車免許で普通の電車だけでなくこんな電車も運転できます

電気を集電して走る系の列車を運転することができ、理論上はこの免許だけで日本中の大多数の列車を走らせてもいいとお墨付きを頂いているわけですが、現実的にはそのようなことはできません。

免許があれば電車ならどこの会社でもすぐに運転できる。
ルール的にはそうなのですが、実際にはそのような運用は行われていません。
なぜならば、電車を運転するときのルールが会社によって異なるからです。
例えば信号で考えましょう。
電車に対して止まれを赤色で現示する停止信号。
電車に対して進んでよいと緑色で現示する進行信号。

←赤色の停止信号  緑色の進行信号→

これらはどこの鉄道会社でもその意味はほぼ変わりません。
でも電車に対して速度の制限を示すため黄色で現示する注意信号。
皆さんはこの信号を超える場合、何キロ以下で運転しないといけないのかせーので答えて下さい。

黄色の注意信号を超える場合の速度制限は何キロでしょ~うか?

はい、せーの。
恐らく人によって答えた速度が異なると思います。
正解は、会社によって速度が異なります。
会社ごとに40キロ~65キロの範囲内でバラバラに定められています。
なぜこんなことが起こっているかというと、各社で定められている運転関係のルールをまとめた、運転取扱い実施基準。
これは国が大枠で定めた鉄道に関する技術上の基準を参考に各社でルールを決めているため、様々なルールが会社間で異なります。
そのため会社間で運転に関するルールが全く異なってしまっています。

会社によって電車を運転するルールが異なります

つまり他社の電車をいきなり運転しろと言われても、ルールが違うのでそう簡単にはできないことになります。
なので同業他社に転職したとしても、実際に運転するためにはその会社の運転のルールを1から勉強し直さないといけなく、今までどれだけのキャリアを持っていたとしてもあんまり役に立たないのが現状です。

じゃあ会社が同じであればどこまででも運転できる。
と思われるかも知れませんが、これも実は違います。
中小の鉄道会社なら確かにそうですが、大手鉄道会社なら乗務区ごとに担当できる線区と車両が決まっています。
例えば東北本線って東京から盛岡まで一つの線路で繋がっているわけですが、普段東京エリアで運転する運転士は仙台エリアや青森エリアを運転することはありません。

1つの路線でも様々な乗務区が分割して担当します

なぜかというと実務上の都合と人間の限界が関係しています。
まず1つ目、実務上の都合。
JR東日本のように広大な範囲で営業しているにも関わらず、1つしか乗務区がないみたいなことをしてしまうと、乗務員の数が膨大なことになってしまいます。
そうなれば管理・監督するのも大変なのは勿論ですが、各地へ乗務員を派遣するのも困難ですし、トラブルが起こったときに現地へ助役が行くにも時間がかかりすぎます。
そして人間の限界。
運転士は自身の運転する路線の特徴。
例えば、信号・標識の場所、曲線や勾配の地理条件、保安装置の設置場所など、運転するにあたって必要な情報を全て頭に入れて運転しています。
さらには個々の車両に対しても習熟を必要とします。
なので、あまりにも広大な範囲となると物理的に暗記しきれないのは必然です。
そしてあまりにも運転範囲が広いと、この区間の運転はかなり久しぶりっていう現象も起こります。
そうなればどうしてもミスを誘発してしまうので、様々な事情から乗務区ごとに担当できる路線を限定しています。
さらに会社によっては路線だけではなく、その会社の看板を背負うような車両は、一定の経験と技能を持ち合わせた人しか運転できないと指定している場合もあります。

会社の看板電車は運転できる運転士が選抜されていることもあります

いずれにせよ、会社の定めたルールによってその運転士がどこまで運転できるのか。
乗務区ごとに担当路線と担当車種が定められているので免許1つで果てしなく運転できるということはないのです。

車の免許はこれ1つで日本津々浦々運転できるわけですが、電車はそうでないことを知ってもらえたと思います。
色々な制約があることにより、電車のダイヤが乱れたときに「担当する乗務員を手配しています」って理由で電車がなかなか駅を発車することができずお客さんに迷惑がかかったり、自由に同業他社間で転職できないなど運転士自身の不利益になっているのが現状です。
とはいえ、じゃあどこまでも運転させたろかって会社に言われたらそれはちょっと…てなってしまいます。
あまりにも広大な担当範囲だと、この区間を運転するのは数ヶ月ぶりみたいな感じで運転間隔が開くので、確実にうっかりミスの原因になるのは目に見えています。
毎日同じような所を運転するので完璧に習熟できているわけですが、たまーにしか運転しないってなると忘れていたみたいなことが起こりえます。
そんなことで怒られたくないので、乗務区ごとにある程度の範囲で区切ってくれた方が私は有難いですね。
ただ、会社間の転職したいと言うときの壁は取っ払ってくれという都合のいい話をして締めくくりたいと思います。

少し前まで鉄道免許に自身が所属する鉄道会社の名前を書かれていたんですよね。
でも最近それがなくなってしまったので、転職した際にここの所属会社の変更を運輸局に申請することがなくなりました。
だからなんやねんって話ですが…

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