鉄道とバス IC履歴が違うのはなぜ?【ゆっくり鉄道豆知識】

ひとりごと

はじめに

皆さんが持っているICカード。
今までに履歴を印刷したことはありますか?
その履歴を見てみると、列車に乗ったときは乗った駅と降りた駅が書いてあるのに、バスに乗るとバス会社名しか書かれていないことを気づかれていたでしょうか?
なぜこんな違いがあるのかご存じですか?
実は列車に乗ったときと、バスに乗ったときとではICカードに書き込まれる情報に違いがあったんです。

ICカードの履歴って?

そもそもICカードの記録を確認できることって知っていましたか?
知らないよって方は、是非お近くの駅の券売機にICカードを入れてみて下さい。
チャージと書かれた横に履歴印字と書かれたところがあるので、そこを選択すると直近の記録を印刷することができます。

券売機にICカードを入れると履歴を確認することができる

記録はこんな感じで出る


この記録を確認すると、乗車駅にHS野田、降車駅にHS尼崎と書かれていますね。
HSは鉄道会社を示すもので、阪神電車を指します。
なので阪神電車の野田駅から乗車して、尼崎駅で降りたことを確認することが出来ます。
同じような感じで一つ下の記録も確認しましょう。
あれあれ?一つ下には阪神バスとしか書かれていませんね。
電車に乗ったときは、ちゃんと乗車駅と降車駅が書かれているのに、バスに乗ったときはバス会社名しか書かれていませんね。
なぜこんなことが起こっているのかと言うと、実は電車とバスとではICカードの処理方法が少し異なります。
まず電車に乗るときは、皆さんどうされますか?
ICカードを乗る駅で改札機にタッチして、また降りる駅でもタッチしますよね。
この時ICカードではどの様な処理をしているかと言うと、乗る駅でタッチした時はICカード内に、乗車駅、時間の情報が記録されます。
で降りる駅で再び改札機にタッチすることで、ICカード内の乗車駅の情報を確認して、運賃を精算し、ICカードに降車駅、時間、精算後の残額の情報が記録されます。
一方バスに乗ると少し事情が異なります。
一部均一運賃路線によっては降りるときだけのタッチの場合もありますが、乗る距離によって運賃が異なるときはバスに乗るときも電車と一緒で、バスに乗ったときと降りたときでそれぞれ読み取り機にタッチしますよね。
やっている行動は一緒ですが実は処理の仕方が異なっています。
実は乗車時はICカードには乗車のバス停の情報が記録されず、バスの中の記録媒体にこのICカードは○○バス停から乗車したと記録されます。
で降りるバス停でICカードを読み取り機にタッチすると、バスの記録媒体に記録された乗車バス停の情報を確認して、ICカード内に利用したバス会社と精算後の残額の情報が記録されます。
もうどっちかに統一してしまえばと思われるかも知れませんが、電車とバスとで少し事情が違うのでなかなか難しいでしょう。
一番大きいのは、カード内に乗車駅の情報を残す、残さないことでお客さんが誤ってICカードを利用したときにその後の処理が変わってきます
もし電車に乗る方が、乗車時に誤ってICカードを改札機にタッチしてしまうと、鉄道式ならその時点で駅に入場した記録がされます。
そのICカードは降車駅で改札機にタッチしないと、それ以降使用できなくなります
最近はICカードを複数枚持つ方が多く、入場時に間違ったカードをタッチしてそのままにしてしまう方がいます。
そうなれば駅員にICカードの記録を処理して貰う必要があります。
電車なら駅員が改札で行うので、電車の遅れには繋がらず、精々改札に並んでいる人が困るぐらいですが、もしバスならバスの運転手が処理を行わないといけないので、バスの出発が遅れ多くのお客さんに迷惑がかかりますよね。
ICカードをバスの中で処理すると時間がかかってしまうので、それならICカードに乗車した記録を残さず、バスの中での手間を減らす方が効率的ですよね。
逆に降車駅でタッチを忘れてしまった場合でも、鉄道式なら乗車した記録がICカード内に残ったままになってしまっているので、後日そのカードを使用することが出来なくなっています。
なので、その時も駅員が処理を行いますが、もしバスでこれをやるとまた処理に時間がかかり、出発が遅れてしまいますよね。
もしICカードの不具合があった場合、バスの性質上お客さんの応対をバスの中で完結しないといけません。
なので係員の手間をなるべく省く為に、ICカード内に書き込む情報を最小限にしているわけですが、この方法にも弱点があります。
それは正しく運賃を請求できないときがあるからです。
特にバスを降りるときにちゃんとタッチしないと、運賃の請求が出来ません。
わざと不正乗車をしようとする人は論外ですが、カード内残額が不足しているのに気付かずに通過した、タッチが上手く出来ずに通過したときなど、運転手はお客さんを止めにかかりますが、そのまま行ってしまった場合、ICカード内にバスを乗車した記録が無いので、次回以降も普通に使用できます。
電車なら降車時に上手くICカードをタッチできていなかった場合、ICカード内に乗車した記録が残ったままになっているので、次回以降に電車を利用するときに改札機にICカードをタッチするとエラーが発生して、駅員が処理しないと使用できません。
なのでそこでしっかりと前回分の未払いの運賃を請求することが出来ます。
手間を取るのか、正しい運賃を取るのかそれぞれのメリット・デメリットを考慮していて電車とバスでICカードに書き込む情報が異なっている訳です。

同じタッチでも書込む情報が違う


さらに電車とバスとではICカード運用に大きな違いがあります。
それがICカードの読み取り機をどこに設置するのかです。
電車なら駅に、バスなら車内にそれぞれ読み取り機があります。
これもそれぞれの事情を考慮して設置されています。
もしバスに鉄道式を導入すると、全てのバス停にICカードの読み取り機械を設置しないといけません。
鉄道駅ならホーム上に機械を設置するスペースがありますが、バス停は全般的に狭いので厳しいでしょうね。
さらに稼働させるために電気を準備しないといけなく、大型のスクリーンがあるようなバス停はいざ知れず、簡単な時刻表しかない小さいバス停には設置できなさそうですね。
それならバスの中に読み取り機械を設置した方がコスパがいいですね。
じゃあ逆に電車にバス式を導入したらどうなるでしょう?
お客さんとしては電車を乗り降りするたびにICカードをタッチしないといけません。
電車に乗られる方はバスに乗る場合と比べて、目的地に行くまでに多くの乗り継ぎを要する場合が多いです。
路線を乗換えるだけで無く、普通から快速など列車の種別を乗換える場合も乗り換え元と乗り換え先で、一々ICカードをタッチしないといけなくめちゃくちゃ面倒くさいですよね。
しかも電車の各ドアにICカードの読み取り機械を設置しないといけなくなり、入場と出場の機械を各ドアに設置すれば、長編成なら百台以上の機械を設置しないといけなくなってしまいます。
それを考えると駅に読み取り機械を設置した方が効率がいいですよね。
ただ最近はJR西日本のワンマン列車が走行する路線で、車内にICカード読み取り機械を設置している、一見バス式みたいな列車が走っていますね。

車内に読み取り機がある車両もある


この様に同じICカードを使用していても、電車とバスではそれぞれの特徴を考慮して運用方が異なっているのです。
その結果として、ICカードの履歴を印刷すると電車とバスでは異なる表示方になってしまっているのです。
いかがでしたでしょうか。
今回はICカードの履歴の謎について解説しました。
利用する公共交通機関によって同じICカードでも仕組みが違っていることを知って貰えたのではないかと思います。

裏話

この違い。
鉄道会社に入るまで全然知りませんでした。
考えて見ればICカードの処理を駅でやっている風景は見たことはありますけど、バスの車内でやっているのを見たことは無いんですよね。
乗車駅の記録が無ければ不正乗車の温床になりそうですけど、バスなら運転手の目の前で清算するので、不正乗車されないって考えかたなんでしょうね。
鉄道でやったら目につきにくい改札から不正乗車されまくるでしょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました